相続時精算課税って選ぶべき?
2023年11月27日
令和5年の税制改正で、大きく取り上げられた相続時精算課税。
令和6年の1月1日から、今までは無かった基礎控除額(110万円)が設けられ、
暦年で基礎控除以下の贈与なら、生前贈与加算の対象にならず、申告書の提出も不要となります。
要するに、年間110万円までの贈与なら贈与税がかからない「枠」が
今までの暦年贈与分とは別に、相続時精算課税制度を選択している人からの分が
もう一枠、増えるってことです。
例えば、お父さんから100万円、お母さんから100万円毎年もらっていたとして
贈与税はもらった人の名前で集約するので、合計200万円。
今までは110万円の基礎控除額を差引きしても、90万円分は課税対象になっていました。
令和6年からは、例えばお母さんからもらう分は相続時精算課税制度を選択しますって届出をすれば
それぞれ110万円以下の贈与になるため、申告不要で課税なし、です。
すごい~、それって利用しない手はないよね!って思いますが、ちょっぴり注意も必要。
まずは、初年度の注意点です。
基礎控除以下の贈与をするだけだとしても、まずは相続時精算課税制度の選択届出書は出さなければなりません。
贈与税の申告期限内、3月15日までには必ず届出を忘れないように!
また、一番最初にさらっと書いた「基礎控除以下の贈与なら、生前贈与加算の対象にならず」っていうところ、
実はとても重要なのです。
生前贈与加算っていうのは、相続が始まる前の決められた期間にしている贈与(いわゆる駆け込み贈与、的な)は、
贈与税で終わりっていうことじゃなくて、相続財産に差し戻して相続税を計算しますよっていうルールです。
生前贈与加算は、従来は3年でしたが、これも徐々に移行して最終的には7年になります。
これも、令和5年の税制改正で変更されました。
今回の相続時精算課税での基礎控除額は、この生前贈与加算の対象にもならないっていうのがウリですが、
おそらく、相続時精算課税制度が今回の改正で普及してきたタイミングを見計らい、
今後の税制改正で「今後の贈与は基礎控除以下でも生前贈与加算とします」と
財務省主税局が言ってくるのでは?と思われますので、飛びついてしまうのは危険かもしれません。
そして、相続時精算課税は、一度選択してしまうと、撤回はできません。
先の例で言えば、お母さんからもらう財産は、その後はずーっと相続時精算課税の対象になり、
2500万円までの特別控除枠内までは贈与税はかかりませんが、必ず相続税で財産額に差し戻して計算されます。
それが有利なのか、不利なのかの判定はなかなか難しく、ケースバイケースです。
ましてや、将来、相続が発生するまでにどんな税制改正が行われるのかは予想がつきませんし。
相続税の基礎控除額がグーっと引き下げられて、今や相続税もお金持ちさんだけの税金ではなくなっています。
うーん、悩ましいですなぁ・・・。
皆様もよく考えて、納得のいく選択をぜひしてくださいね。