年収の壁、いろいろありますよ!!!
2025年05月17日
横浜市緑区で開業している税理士の土屋友里です。
年明けから、税制改正の話題としてあちこちで見かける「年収の壁」という言葉。
103万円、という数字は聞いたことのある方が多いと思います。
今回の税制改正で、令和7年から(今年、ですよ!!!)その壁が引き上げられ、
所得税のかからない範囲が年収160万円になるということになっています。
ここで一言、
年収、っていうのは、給与所得者(いわゆるサラリーマンですね)の「年間収入金額」のことです。
会社等にお勤めの人は皆さまご存じかと思いますが、年末に会社からもらう「源泉徴収票」っていう紙の
一番左上に書いてある、一番大きな金額ですね。
年間の「所得」というのは、その隣に書いてある「給与所得控除後の金額」っていうのになります。
今回の税制改正では、その「給与所得控除」っていう年収から所得を計算するために引いてよいとされている金額が
最低保証額55万円だったのを10万円上げて65万円にしたことと、
基礎控除額(税金を計算する前に基本すべての人が引いてよいとされる金額)が
48万円から最大95万円まで引き上げられたことで、65万+95万=160万、
年収160万円までの給与所得者は所得税がかからない人になるということになったのです。
所得税がかからない人≒その家において誰かの扶養家族になれる人、という構図は変わっていませんので
夫の扶養の範囲内でパート勤務などをしたいという希望がある人にとっては、範囲が広くなったといえますね。
もう一つ、大きな改正として、「特定親族特別控除の創設」ってのがあります。
特定だの特別だの、何が何やら言葉だけではわかりにくーい!
ので、なるべくわかりやすい解説を試みます。
もともと、4年制大学に通っているであろう年頃の子ども(19歳~22歳ですね)が居る家では
その子が扶養家族になっていると、親の税金の計算上で結構大きな金額を引けていたわけです。
それももちろん103万円の壁がありましたので、その子がアルバイトをしすぎてそのラインを越えてしまうと
親の所得税がドンっと増えてしまう仕組みでした。
そうすると、この壁を意識して年末の忙しい時期に学生アルバイトが一斉に働き控えをしなければならなくなる。
働く方も、雇用する側にとっても、大迷惑だったこの仕組み、
これが年収150万円(160万円ではないので注意!)までだと、今までの103万円までの時と同じ額、
親の税金の計算上考慮されるようになりました。
また、その金額を超えても、今までのように突然控除額がゼロになってしまうというのではなく、
年収188万までは段階的に考慮される金額が減る、という仕組みに変わりました。
さすがにそれを超えたらゼロになってしまいますが。
これって、働き手不足の今の日本にとって、お互いにウィンウィンなのかも?って思います。
と、ここまで書いてきましたが、ここからが実はとっても重要です。
今までのお話は全て、「所得税」という「税金」を計算するうえでのお話。
「年収の壁」って、本当はまだまだあるんです。
例えば、
①大きな会社などにアルバイトやパートに行っている人なら「年収106万円の壁」
厚生年金や健康保険などに自らが加入者とならなければいけなくなります。
もちろん、長い目で見れば厚生年金に加入できると、将来の年金なども期待できますし
支払う社会保険料も半額は会社負担となりますのでよい、と考えることもできます。
が、とにかく、目の前の手取り金額は社会保険料が天引きされますので減ってしまいます。
②住民税の計算上は「年収110万円の壁」
所得税の基礎控除は引き上げられましたが、実は住民税は変更されていません。
そのため110万円を超えると、所得税は課税されなくても翌年の住民税は課税されます。
③すべての人に関係する「年収130万円の壁」
年収が130万円以上になると、勤めている会社の規模等に関係なく
社会保険上は扶養家族から外れ、原則として自身で国民年金や国民健康保険に加入しなければならなくなります。
社会保険料というのは、実は所得税が発生するかどうかよりずっと金額的な負担として大きいものです。
先日、社会保険労務士の先生とお話しする機会があったのですが、
そのあたりの周知が全然足りていないような気がすると嘆いておられました。
私も、そう思います。
もちろん、どうせのこと、壁なんて気にせずにいっぱい稼いでいただいて
家計にも日本経済にも貢献するっていうのはとても良いことだと思います。
それが可能な方は、ぜひともそうしていただけたらと。
ただ、ボーダーラインあたりで働くライフスタイルの方々が、
後で後悔することのないよう、
知識は最大の防御であり武器にもなりますので、備えてくださいませ。
ついつい熱くなって長くなりました。
今日はこの辺で。