令和6年6月からの定額減税について、私見です
2024年05月01日
横浜市緑区で開業している税理士の土屋友里です。
ニュースでもちらほら聞こえてくる定額減税、いよいよ来月からその運用が始まります。
どんな制度ですかっていう質問も増えてきました。
ざっくり言ってしまうと、
「国内に住む本人とその扶養家族1人当たりにつき令和6年において
4万円(所得税3万円と住民税1万円の合計額)を減税してもらえるという制度」です。
例えば、サラリーマンのお父さんと扶養の奥さんと子供2人の4人家族の場合、
トータルで4万円×4人分=16万円分、税金を払わなくて済む=手元に残るお金が増える、
っていうことですね。
それは、物価高の昨今の傾向において、大変助かる制度だとは思うのですが…
なんとも今、私はモヤモヤが止まりません。
なぜかというと、とにかくこの制度、とっても複雑でややこしいんですよ。
減税とは銘打っていますが、実際に年間支払い税額がそこまでいかない人がいた場合には
その減税しきれなかった分は給付金として支給予定のため、
実態としては一人4万円の給付金を支給するのと変わりません。
だったらコロナの時に支給した10万円の給付金と同様に
一人4万円振り込んでほしかった…! 振込口座の確認だってその時一度したんだし。
あのとき受けた「ばらまき」の印象がよほど嫌だったのでしょうか、
あくまで減税です、でも引けない人には給付します、
という複雑な制度になってしまいました。簡単にしましょうよ~(涙)
この6月からこの制度の何が始まるのかというと、以下の通り。
会社等の給与支払者が給与や賞与の支払時に差し引いている源泉所得税、
そこから各人の扶養状況等に応じた減税額分を対応させて手取りを増やします。
1か月分の給与では税金が引ききれなければ、減税額に達するまで翌月以降に引きます。
会社の給与支払い担当者は、社員のそれぞれについて
扶養家族の状況を確認して減税額を把握し、引ききるまで毎月の手取り額を調整します。
ここまでだって、扶養家族の状況の再確認が必要です。
(なぜなら、いつも見ている所得税計算のための扶養家族とはその条件等が違うのです)
しかも、高額所得者を対象から除くという政府の方針により、
居住者で合計所得金額が1,805万円(給与所得のみの場合は収入約2,000万円)
を超える人はこの恩恵を受けられず、給与支払者は年末調整時にそれもチェック。
さらにさらに、所得税は令和6年分の所得が上記の高額かどうかの判断の対象ですが、
住民税は令和5年分の所得で判断が行なわれるので、
それぞれの時点の扶養家族の数も含めてまたもやチェック。
(子供が生まれたとか、家族が亡くなった、海外に移住した等々…)
なんだか書き出してみているだけでイヤになってきました。
ちなみに、サラリーマンではない個人事業主等は、
確定申告時に(予定納税がある人はそこから)減税されます。
年金と給与がある人などは、2重に源泉税で調整されてしまう可能性があるので
それも確定申告時に精算します。
今は、現実的にこの事務負担が降りかかってきているのは
会社等で給与支払いの担当をしている人たちだと思いますが、
来年の確定申告期にはまたいろいろな話や質問などが湧き出てくるのだろうなあ。
総務省発表のQ&A集に給付ではなく減税を行うこととした理由として
「賃金上昇が物価に追いついていない国民の負担を緩和するには、
国民の可処分所得を直接的に下支えする所得税・個人住民税の減税が最も望ましい
と考えられたため」とあるのですが、
1年限りのこの制度のためにこのややこしいルールを理解し、
事務負担を国民にさせることが、そもそも「最も望ましい」のかどうか???
せめて、私のお客様には困らないようにご説明しようとは思いますが
この制度に関わる人たち皆さんにとって、誰も得をしないよなぁ…
なんて、やっぱりモヤモヤが止まりません。
まあ、気を取り直して、日々勉強ですね!
その前に、ゴールデンウイーク後半!
特に旅行の予定などはない我が家ですが、後半はお天気もよさそうだし楽しまなくちゃ。