税金のこと

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なぜ、1月1日に…能登半島地震の不運なタイミング

2024年01月26日

横浜市緑区で開業している税理士の土屋友里です。

まずは、この度の令和6年能登半島地震により被害を受けられた皆様に、心からお見舞い申し上げます。

本日1月26日現在、状況は依然として落ち着くことはなく、

日々の生活の不便や、生活再建の危機にさらされている方も多くて心が痛みます。

 

それにしても、なぜ、1月1日というタイミングで…!!と、税理士としては思ってしまうのです。

所得税の計算上では、12月31日と1月1日では、あまりにその影響が違いすぎるからです。

もちろん、国としてもできるだけのことは考慮してくれ、すでに石川県、富山県を中心とした方々に向けて

国税の申告期限等の延長や納税の猶予、酒造所等への酒税の減免などの発表もしていますし、

元々の仕組みとして、雑損控除やその繰越控除、災害減免法による税金の減免などもあります。

雑損控除とは、災害や盗難等により生活に通常必要な資産に生じた損害のうち、一定額を所得金額から控除できるものです。

(そのおかげで、その年の税金額が下がります。)

そして、繰越控除とは、控除額のうち、所得金額から控除しきれない金額がある場合に、

翌年以後にその余っている金額をその年の所得額から控除できるという制度です。

(そうすると、翌年以後の税金額が下がります。)

令和5年3月までは、翌年以後3年間のみに繰り越して控除することとなっていましたが、

令和5年4月1日以後、特定非常災害によって生じた雑損失については、繰越控除期間が5年に延長されました。

ちょうど、今回の確定申告から適用されることになった税制改正項目の一つです。

この令和6年能登半島地震は、その最初の適用例になることと思います。

 

でも!

1月1日に起こってしまった地震では、これらの税金を減らすことができるルールは

あくまで令和6年分の所得税の計算にしか適用できません!

これから計算して、納税しなければならない令和5年分の所得税は、

納税は猶予されるかもしれませんが、減らすことはできないのです(涙)。

いくらそのあと5年間にわたって損失額を考慮して税金計算しますよ、って言っても

そもそも損失額を引けるような所得を得られるのかどうか、先は見えないですよね。

個人商店などを営んでおられた方々などは、

終わってしまった令和5年分の税金計算からこそ、自宅の損壊なども考慮してほしいに決まってるのに。

 

事業を営んでいた方の、事業用資産(店など)の損失によるマイナス分が多大な場合は、

青色申告をしていれば「純損失の繰り戻し還付」という制度により令和5年分で計算した税金を

来年取り戻すことができる可能性があります。

(そういう意味からも青色申告って大事です!いわゆる白色申告では繰越控除しかできません…)

それでも、一度納税したうえで、繰り戻して還付を受けるという手続きです。

面倒だし、その納税資金はどこから出すの?ってなりますよね。

何度もつぶやいてしまいますが、せめて一日前の地震だったら…と思わずにはいられません。

壊れてしまった財産の損失分はもちろん、災害関連支出として、片づけ費用等の

年が明けてからかかった費用等についても、わかるところまでは令和5年分の計算に入れられたのに。

 

今後、この点について何らかの救済策が出てくるということはあるのでしょうか?

難しいかな…と思いつつ。

そんなことを考えているこの瞬間も、被災地の皆様は大変なご苦労の中にいらっしゃる。

避難所での生活で税金どころじゃないよ!って言われてしまいそうです。

本当に、希望をもって日々を乗り越えていただきたいと願っています。

本日はこのあたりで。

 

 

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